元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「これも魔王が今もこの大陸を治めているせいだろう。人はいつになっても虐げられ続ける。いずれこの国に被害が及ぶのは間違いない」

「でしたらお父様、私を……今度こそ勇者として送り出してください」

 きっぱりと言い切り、父をまっすぐに見つめる。

「そのために私がいるのではないのですか。人の手にレセントを取り戻すために」

「そうだな。再三、お前には聞かせてきたと思うが」

 国王が立ち上がる。そして、ティアリーゼの前に屈んだ。

「かつて我が一族はこの大陸を治めていた。それを奪っていったのがかの魔王だ。その瞬間よりレセントは亜人の手に落ち、人は隷属することとなった」

「はい」

< 19 / 484 >

この作品をシェア

pagetop