元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 こうして過ごす時間も、油断させるための演技かもしれない。シュクルが心を許したところで残酷に切り捨てるのかもしれない。そういう不安と心配が声色から感じられた。

 ティアリーゼにそんなことをするつもりは一切ない。

 だが、言ったところで本当の意味で安心させることは不可能だろう。嘘を吐くことは難しくないのだから。

「あの人を気にかけているんですね」

「そりゃあ、誰だって巣立ちしたばっかの雛を放っておけねぇだろ。あんまりいい思いしてこなかったみたいだし、幸せになってくれたらって思うよ」

(……雛、って)

「あなただったんですね。シュクルに雛って言ったのは」

「え?」

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