元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
(……殺すとか滅ぼすとか、シュクルはよく口にするわよね。でも、そんなことができるのかしら)

 存在を許されないほど弱く、唯一残っていたからと魔王に選出されたようなシュクルが人間を滅ぼせるとは考えづらい。

 ましてやこの性格である。武装した人間を前にしても、攻撃を仕掛けるどころか、きょとんとしたまま尻尾を振っていそうだった。

「ほら、怪我もねぇし」

「確かにクゥクゥの血の臭いはしない」

「人間のは?」

「少し」

「うげ、後で洗わねぇと」

 ふたりで話すところを見ても、そこまで脅威になるとは思えなかった。

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