元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 完全に混乱したティアリーゼはシュクルの身体を押しのけようとしたが。

「動くな」

「――んん」

 より強い力で抱き締められ、唇を柔らかく食まれる。

 もう、ティアリーゼにはなにが起きているのかわからなかった。

 ただ理解できたのは、シュクルなりに人間の求愛行動を真似ようとした事実。そして、どうやらこの行為を気に入ったらしいということ。

「シュクル、待って……」

「これは好きだ」

「んっ、う」

 こんなにもシュクルの力が強いことを今まで知らなかった。

 己を求める男の姿を、はっきりとシュクルに感じる。

「っ……ふ、ぁ」

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