元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 漏れた吐息をすくい取られ、薄く開いた唇の隙間にあろうことか舌が差し込まれる。

「んんーっ!?」

 口の中を舐められたティアリーゼは、驚いて舌を噛みそうになってしまった。

 顔を離そうとしたのに、いつの間にか後頭部を手で固定されている。

 シュクルはティアリーゼの戸惑いも混乱もまったく気にしない様子で、そのまま深いキスを続けた。

 舌と舌とをこすり合わされ、不意にティアリーゼの身体から力が抜ける。

「うん?」

 不思議そうな声と共に、ようやくティアリーゼは未知のキスから解放された。

 シュクルに身体を支えられながら、荒い息を繰り返す。

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