元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「あ、なた……なんで……こんなキス……」

「舐めたい」

「舐め……!? だめよ、そんなこと……!」

「なぜ?」

「な……なんだか変だからに決まっているじゃない!」

「だが、これは好きだ。気に入った」

「――んぅ」

 長い指で顎を掴まれ、再度深く口付けられる。

 これが人間の求愛行動なのだ、と教える側だったはずのティアリーゼが、すっかり主導権を奪われていた。

 ちう、とときおり音を響かせながら、シュクルは落ち着かないキスを何度も重ねる。

 たまに唇を甘噛みしてくるところが唯一獣らしさを見せた。だからといってティアリーゼの気持ちが落ち着くわけでもない。

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