元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「……ティアリーゼの味がする」

「それ以上変なことを言うのはやめ――んんん」

 耐えきれずにシュクルの肩を強めに叩く。

 何度も叩かれるのが不快だったのか、シュクルはティアリーゼの腕を掴んだ。

「なにが間違っている? 私はお前の知る方法を返しただけだ」

「も、もともと私に特別なことをしてほしかっただけでしょう? あなたからするのは意味がないと思うの……!」

「確かにそうかもしれない」

 納得したように言うと、ようやく本当の意味で解放してくれる。

 ぱっと離れたティアリーゼは自分の胸を押さえて何度か呼吸した。まだ顔も頭もひどく熱いのに、目の前の元凶は涼しい顔をしている。

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