元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 ――が、いつも以上に尻尾がご機嫌だった。

(ものすごくぱたぱたしてる……)

 尻尾の勢いは、そんなに地面を叩いて大丈夫かと心配になるほどだった。ぱたぱたという音がやや離れた位置にいるティアリーゼの耳にも届いてくる。

「もう一度したい」

「ここではだめよ。絶対だめ」

「なぜ?」

 シュクルは眉を寄せてティアリーゼに近付く。

 こんなにも感情をあらわにしているのは初めてのことかもしれなかった。

「人間のやり方が気に入った。お前も痛がらない」

「痛くない……けど、それ以上にいろいろよろしくないの!」

「だから、なにが?」

(ああ、もう!)

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