元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 意図的に理解を拒んでいるのではないかと思ってしまった。

 ティアリーゼの動揺を理解せず、シュクルは再び顔を寄せる。

「舐めたい」

「だめだって言ってるでしょう……!」

 なんとかキスをされないよう、必死に逃れようとする。

 いつもならそろそろ引いてくれるところだが、今日のシュクルは引かない。

(あんなキス、何回もされたらどうにかなっちゃうわ)

 既にティアリーゼの思考は止まる寸前だった。

 迫るシュクルと拒むティアリーゼとの攻防は時間の問題だったが――。

「――そろそろ、報告をさせていただきたいのですが」

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