元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「だから足が速い」

 街の対処が早かった件について言っているのだろう。

 だが、今回ばかりはゆっくり城に戻ってきてくれた方がありがたかった。

「今日は大変な一日だったわ……」

 街で金鷹の魔王キッカと楽しく遊んだ。

 人間の亜人狩りに出くわした。

 シュクルが初めて嫉妬するところを見た。

 ――とんでもないキスをされた。

(本当に大変だったわ)

 心の中でもう一度言ったティアリーゼの顔を、シュクルが覗き込む。

 あまり感情を映さない瞳がやけに熱っぽいのを見て、ぎょっとした。

「もう一度してもいいか?」

「なっ、なにを……?」

「キスを」

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