元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「そもそも、一緒に菓子を食べない」

 さく、とシュクルが焼き菓子をかじる。

 ティアリーゼの作った、タルツの伝統的な菓子だった。

「おいしい?」

「お前の次に」

「……私っておいしいの?」

「とても。興奮する」

「えっ」

「違うか? 嬉しくなる? 幸せ?」

「なんとなく伝わるから言い換えなくて平気よ」

(前よりよく喋るようになった気がする。たくさん話すから、会話の仕方を覚えたのかしら?)

「キッカさんがいつもここにいてくれたらいいのにね。そうしたらあなたも、言葉に悩まないでいられたかもしれないわ」

「西を守る魔王がいなくなる。それは人間にとってもいいことではない」

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