元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「私はこんなにもお前を求めているのに」

「……だから、そういうのはずるいわ」

「なにが?」

「わからないならわからないままでいて」

 好意を全面に押し出しながら甘く囁かれれば、ティアリーゼの心も揺らいでしまう。

 キスはそう頻繁にするものではないし、そんなふうに口にして求め合うのも恥ずかしいものだ、と思っているのだが。

「目、つぶって」

「なぜ?」

「言う通りにしてくれないならキスしてあげない」

「……それは困る」

 きゅ、とシュクルが目を閉じる。

 その素直さを微笑ましく思いながら、その肩に手を添えた。そうして背伸びをしないと長身のシュクルに届かない。

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