元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
(舐められないようにしないと)

 隙あらばおかしなキスをしたがるシュクルを警戒しつつ、ゆっくり唇を重ねる。

 ぱたぱたと聞こえた音は、シュクルが尻尾で床を叩いた音だろう。

「興奮する」

「私に言う分には構わないけど、ほかでは言わないでね。なにかと思われるから」

「わからない」

「あなたにも恥という概念があればいいんだけど」

「ある。初めて尾に触れたいと言われたときは照れた」

(ああ、そういえば……)

 顔を押さえていたのを思い出す。

 あの手の内側で、シュクルの顔が赤く染まっていたとはとても思えなかった。

「ちゃんとキスしたわ。だからいいって言ってくれるわね?」

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