元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「……ふうん? よくあの亜人どもが通してくれたな」

「それは――」

「ああ、あんたアレか。タルツのかわいそうな勇者様か」

 ぎゅっと心臓を掴まれたように感じ、ティアリーゼは顔をしかめる。

 この大陸にはいくつも国がある。その中のひとつがタルツだが、こんなところで亜人たちの平和を脅かす男にまで噂が耳に入っているとは知らなかった。

「……知っているなら光栄だわ」

「俺の知り合いがあんたと旅に出たって言ってたぜ」

(じゃあ、あのとき『仲間』だと思っていた人の中に……)

 眩暈を感じ、側の壁に手をつく。

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