元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 彼らの名はいまだに知らない。あのときは彼らの無愛想も素っ気なさも、苦しい戦いで気が張っているからだと思っていた。

 だが、今ならわかる。彼らは名乗る必要性を感じていなかった。ティアリーゼはいずれ命を落とす哀れな供物でしかなかったのだから。

(……こんな話をしたいんじゃない)

 男はティアリーゼの反応を見ている。

 下手に心を揺さぶられないよう、気持ちを落ち着かせて再び前を向いた。

「どうしてあなたは彼らを狩るの? 確かに身体の一部が獣だったり、文化が違っていたり、私たちと違う部分はあるわ。でも、同じように言葉を交わすことのできる『人』じゃない」

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