元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 その夜、ティアリーゼのベッドにシュクルが潜り込んできた。

 珍しくキスを迫られず、不思議に思いながらその顔を見上げる。

「今日はおとなしいのね?」

「邪魔をしてはいけないと思った」

「邪魔?」

「考え事の邪魔だ。お前はなにか悩んでいるのではないのか?」

 至近距離で見つめられ、ティアリーゼは一瞬息を呑んだ。

 闇に揺れる青い瞳は片時も逸らされない。

 なぜ、帰ってきた自分にシュクルがいつものちょっかいをかけてこなかったのか、ようやくその理由を理解した。彼は悩める恋人のために気を遣ったのだ。

「そうね。悩んでる。翼狩りの人は、あなたたちのことを……その、悪く言っていて」

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