元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「仕方がない。人間はそういう生き物だ。我々の中にも人間を嫌う者は少なくない」

「でも、だからって『人』じゃないなんて言い方はいけないでしょう。あなたを知っているから、そう言われるのが嫌だったの」

「お前はいつだって私に優しい」

 シュクルが喉を鳴らした。

 そして、ティアリーゼの身体を抱き寄せる。

「私にだけ、ならばいいのに」

「ほかの人はベッドに入らせないわよ。その時点で特別扱いだと思うのだけど」

「もっと、を望むのは悪いことだろうか」

「そんなことは……」

「私はどんどん強欲になる。なにかを望んだことなどなかったのに」

 しゅうしゅうという鳴き声は切なく聞こえた。

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