元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 つきん、とティアリーゼの胸が痛んだのは、一途で純粋なシュクルを待たせているせいだ。

「……いいかもしれない、わ」

「なにが?」

「ちゃんとあなたの奥さんになってもいい。……ううん、なりたい」

 微かにシュクルが目を見開いた。

 そうすると、瞳孔が細くなる。

「……嫌では? 無理を強いるつもりはない」

 シュクルがそう言ってきたことが、これまで過ごしてきた時間の深さを感じさせた。

 日々、彼は雛から成体へ心を進化させている。

「違うの。心の準備ができていなかっただけで、あなたと添い遂げることに文句はないのよ」

「恋人をやめる?」

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