元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 今夜のシュクルはティアリーゼが逃げてしまわないよう、優しく優しく触れてくる。それが逆に落ち着かない気持ちを加速させているのだと知るよしもなく。

 そっと差し入れられた舌を受け入れる。そんなふうにシュクルが自分を味わいたいと言うなら、食べさせてあげてもいいと思ってしまった。

「もっと見せてね。そういうところ」

「だから、なんのことかわからない」

 憮然と言ったのがおかしくてくすくす笑ってしまう。

 笑われているのが気に入らない、とでも言うようにキスで唇を塞がれ、ティアリーゼはまた胸を高鳴らせた。



***



 その次の日からもう、結婚式についての話を広め始めた。

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