元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「自分の治める国以外のことも把握しているのね」

「クゥクゥが特別なだけ」

 シュクルはティアリーゼの腰に腕を回す。

 以前はもっと落ち着かない様子でキスをせがんできたが、シュクルの中で心境の変化があったようだった。

「お前がいないと寂しい。早く帰ってきてくれ」

「うん」

 穏やかな低い声は以前のまま。ただ、子供のわがままに聞こえなくなったのはシュクルの成長によるものだろう。

(最近、あんまり尻尾もぱたぱたしなくなったしね)

 シュクルは少しずつ大人になっていく。

 純粋で無邪気だった瞳も、今は理知的で冷静な光を湛えていた。

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