元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 この変化がティアリーゼの存在によるものであることは間違いない。まだまだ会話に難はあるが。

「行ってくるわ」

「……待っている」

 さらりとシュクルがティアリーゼの髪を撫でつける。

 前髪をかき分けたかと思うと、額にキスを落とした。そのまま、鼻の先と頬と、最後に唇もついばむ。

 本物の夫婦のようだ、とティアリーゼが胸をときめかせていることも知らず、シュクルはそのささやかな触れ合いを楽しんだ。



***



 そうしてティアリーゼはまたカラスの亜人に連れられ、タルツへと降り立った。

 最後に訪れてから結構な時間が経つが、見覚えのある景色はそう変わらない。

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