元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
(やっぱり、タルツにおかしなことなんて起きていなかった)

 ずっと引っかかっていた、翼狩りの男の言葉。

 国になにが起きているかも知らないくせに――という呪いのような嘲りは、ティアリーゼの奥深いところに根強く残っていた。

 しかし、こうして周りを見ても特に気になる様子は見られない。使用人たちが掃除にいそしむ姿も、庭師が庭の花壇を整える姿も、ティアリーゼにとって見慣れたものだった。

 あの男の言葉は、やはり人間でありながら亜人の味方をするティアリーゼをよく思わないがゆえのものだったのだろう。

 ほっと息を吐きながら、それでいて緊張を拭いきれないまま城へ入る。

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