元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 長い間ここを離れていたとはいえ、ティアリーゼはこの城の王女である。物珍しげに見る者はいても、咎める者はいない。

 そうしてティアリーゼが向かったのは父のもとだった。

 長い廊下を渡り、あとひとつ角を曲がれば居室というところまで来て、懐かしい男と鉢合わせる。

「レレン」

「ティアリーゼ様……」

 向こうはティアリーゼの帰還に驚いていたようだった。

「久し振り。急に戻ってくることになってごめんなさい。お父様はいらっしゃる?」

「陛下でしたら、部屋に。ですが……」

 レレンはそこで言葉を切る。

 なにを言うつもりなのか、ティアリーゼが待ってもなかなか口にしない。

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