元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 ティアリーゼ以外に撫でられるのはどうにも違和感があった。あの手で優しく触れられて、シュクルと名前を呼ばれて。それで初めて、本当に欲しいものを得られる。

「いつまでも私の名前を呼んでほしい。それが叶わなくなるのは寂しいな」

「俺が呼んでやるから」

「シュシュではなく。……シュクル、と呼ばれたい。ティアリーゼの声で」

「ほんっとこじらせてるなぁ」

「……いっそのこと」

 キッカの手を払って立ち上がったシュクルが、窓の方へ近付き、遠い目をした。

「ティアリーゼを取り込んでしまえばいいのかもしれない」

「……え?」

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