元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 少しだけ期待に胸をふくらませるが、兄は本題に入らず、まずティアリーゼをソファに座るよう促した。

「そう焦るな。一息つかせてくれ」

「これは失礼いたしました」

(お兄様が私を呼び出すなんて、今までに一度もなかったから)

「茶を用意させてある。菓子でも楽しみながら、近況を教えてくれないか」

「はい」

 テーブルの上に用意されていた紅茶を勧められ、そっと口に運ぶ。

 亜人たちのもとで嗜んでいたものと違う風味の紅茶は、ティアリーゼの舌に馴染んだものだった。

 ――ほんの一瞬、ぴりりとした刺激を感じた以外は。

(……なにかしら)

 疑問はあったものの、もうひと口含む。

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