元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「脅そうとしたところで無駄だ。俺たちは魔王と呼んできたあの獣が、不完全で弱い生き物だと知っている」

「……え?」

「お前に『虫』を付けていたんだよ。こうやって」

 檻の向こうからエドワードが手を伸ばしてティアリーゼの髪を掴み、乱暴に――撫でた。

「虫、という……のは……」

「遠くの言葉を聞くための便利な道具だ。もっとも、気候が合わなかったのかすぐに壊れたようだが」

(遠くの言葉を? ……まさか)

「シュクルが私に話してくれたことを盗み聞きしていたのですか……!」

 以前、ティアリーゼは一度だけタルツに戻った。

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