元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 ティアリーゼが父にも裏切られていたと伝えれば、今度こそ故郷は滅ぶだろう。そしてその破壊は、シュクルにとって正当な権利なのだ。

 ぺたりとシュクルがティアリーゼの背中に薬臭い布を張り付けた。こちらに自生する傷薬らしく、人間のティアリーゼには少々刺激が強い。

 痛みに身をこわばらせると、後ろから抱き締めるように腕が伸びてくる。

 そうしてシュクルはティアリーゼの胴体に包帯を巻き始めた。

 こうしている間は胸を隠し続けるわけにもいかず、こちらを向かないでほしいとひたすら願い続ける。

「終わった」

 シュクルの呟きが聞こえて振り返ると、ぱたぱたと揺れる尻尾が目に入った。

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