元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
(あんなことをした人だなんて、やっぱり思えないわ)

 恐れがないとは言えなかった。ティアリーゼは一番近いところでシュクルの殺戮を見てしまっている。

 血と炎に酔って楽しかったという話も本人の口から聞いていた。

(この人は私と違う)

 そっと手を伸ばし、その頬に触れてみる。

 シュクルはくすぐったそうに身をよじると、ご機嫌に尾を振り始めた。

「いつか、私のことも食べる?」

 それができる相手なのだという思いから質問するが、彼は首を傾げただけだった。

「もし死んでいたらそうしていたかもしれない。そうすればお前は私の中で生き続ける」

「……死ななくてよかったわ」

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