元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 シュクルはティアリーゼに頬を撫でられて、気持ちよさそうに額を擦りつけようとした。

 こんなふうに触れ合うのもずいぶん久し振りに感じられる。

「クゥクゥにも言ったが。たとえ一瞬しか共にいられなくとも、一瞬すらいられないよりはずっといい。私にはお前と生きるその瞬間こそが永遠だ」

(――ああ)

 なによりも愛情のこもった言葉に、ティアリーゼの胸が熱くなる。

「シュクル」

「うん?」

 愛おしい獣を抱き締めると、ぎょっとしたように身をこわばらせるのがわかった。ティアリーゼはシュクルの胸に顔を埋め、込み上げた思いを涙にして溢れさせる。

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