元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「少しだけなら」

 月光色に輝いたそれは、どう見ても人間のものではありえない。

(……きれい)

 そんな感想を抱くのは間違っているような気もしたが、構うことなく触れる。

 手触りは、シュクルの瞳の色と同様形容しがたかった。

 柔らかでいながら硬質で、鱗のざらつきを感じるのにひどくなめらか。あまり温度を感じないのは手に触れたときと変わらない。

「あんまりトカゲって触ったことがないんだけど、普通のトカゲもこういう感じなのかしら」

「……大胆だ」

「え?」

 ティアリーゼが声の方を見ると、シュクルが自分の顔を手で覆っている。

 その仕草がなにを意味するのか、考えて衝撃を受けた。
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