元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
(……照れてる? のかしら?)
ぽかんとするティアリーゼの手の中で、白い尾の先がぴろぴろ動いた。その動きからも照れや動揺を感じ、ぱっと離す。
「もしかして気安く触るようなものじゃなかった?」
「いかにも」
「ごめんなさい、だったら断っても良かったのよ」
申し訳ない思いで言うと、シュクルは顔を手で隠しながら首を横に振る。
「触れたいと言われたのは初めてだった。だから、許した」
甘えるように尻尾がすり寄ってくる。
不覚にもかわいらしいと思ってしまった。また少し惹かれ、遠慮を脇に追いやる。
「もうちょっとだけ触っていてもいい?」