元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「私はティアリーゼ。いろいろあってここでお世話になっているの」

「……メルチゥと言います。ここのメイドです」

「そうなのね。じゃあ……シュクルに雇われているってことなのかしら」

「王の御名を口にするなんて畏れ多い!」

「えっ」

 メルチゥが慌てたように辺りを見回す。

 落ち着かないその様子はいかにもネズミらしく見えた。

「いけませんよ。ほかの誰かに聞かれたら怒られます」

(怒られるだけで済むんだ?)

「……本人は気にしてなかったみたいだけど、それでもだめなの?」

「本人?」

 丸い目を更に丸くすると、メルチゥはティアリーゼの頭の上から足の先まで見て絶句した。

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