見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
「取り組んでたプロジェクトが一段落して少し手が空いたんだ。しばらく休めなくて会いに行けてなかったし、……天気も悪いから良いチャンスかとも思って。これからそっちに行っても構わないか?」
「もちろん!」
「それじゃあ、電車に乗って行くから。よろしく」
張り切った様子で電話を切られたが、「でっ、電車?」といつもと違う移動手段に疑問符が浮かぶ。
天気が悪いと何か良いことでもあるのかと首を傾げながらも、まぁ何か理由があるのだろうと疑問にけりをつけて、私はリングケースを元の場所にそっと戻す。
掃除の残りに大急ぎで取り掛かった。
片付けながらも和哉さんとメッセージのやり取りを続け、彼が最寄り駅に到着するまであと三十分になったところで、勇哉にパパが来ることを伝えにいく。
そして十五分前となり、和哉さんを駅に迎えにいくべく、勇哉と一緒に「行ってきます」と家を出た。
ごきげんな勇哉をベビーカーに乗せて、雨が降りそうな空を気にしつつ駅へ向かう。
足早だったためか少し早く着いてしまい、ベビーカーを降りた勇哉と改札口の見える所で待機する。