見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
見つめ合って微笑んで、その間も寝室へ向かう彼の足は止まらない。
ドアを押し開けて、薄暗い部屋の中を進み、和哉さんが私の体をゆっくりとベッドに横たえた。
「結衣、愛してる」
「私もです。和哉さんを愛してます」
慈しむように頬に触れてきた和哉さんの手に、私も自分の手を添えて微笑み返す。
軽く口づけてから、真剣な眼差しと共に彼が囁きかけてきた。
「俺との結婚、本気で考えてくれないか?」
これまで、結婚を匂わせるような会話がなかったわけではない。
けれど、ここまではっきりと思いを告げられたのは初めてで、頭の中が真っ白になる。
驚きを嬉しさが徐々にのみ込んでいく一方で、嬉しさの中に不安が芽生える。
「はい」と返事をしたいのに、自信が持てず言葉が出てこない。
私が和哉さんと共有できるのは、こうして彼がなんの鎧も身に付けていない一時だけ。
ヤギサワホールディングスの専務として彼が見ている世界は、想像すらできない。
もしかしたらこの先、彼と世界を共有できたり、そのすべてを理解できるような女性が現れるかもしれない。
私よりも、和哉さんをしっかり支えることのできる女性が……。