見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
ここから一時間ほどの場所に彼がいる。少しだけ彼を身近に感じ、胸が熱くなってしまった自分が情けない。
ホームページを閉じて、電話帳に残る彼の電話番号をじっと見つめる。これはもう使われていない番号なのに、いまだ消せずにいる。
「ママ」
可愛い声音に呼びかけられ、慌てて勇哉に顔を向けた瞬間、口元にドーナツを押し付けられた。
「ママにあげる。うれしい?」
よく見たら、ドーナツは食べかけだ。自分のぶんをくれたのは彼なりの励ましだと分かり、私はドーナツを受け取って笑いかける。
「くれるの? ありがとう。勇哉は優しいね」
少し悲しそうにも見えた勇哉の顔に、愛らしい笑顔が広がっていく。
勇哉に気を遣わせるくらい、私は暗い顔をしていたのかと苦笑いする。
既婚男性のことをいつまでも未練がましく考えていないで気持ちを切り替えなくちゃと、スマホをテーブルの上へと手放した。
「明日はボール遊びするって。天気が良いといいけど」
ドーナツを一緒に食べながら話題を振ると、勇哉も「けいととボールであそぶ」と繰り返す。
「予報では晴れだったわよ。勇ちゃん、良かったわね。いっぱい遊んでもらいなさい」