見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
嬉しそうに目を輝かせて、勇哉はお母さんに頷き、新しいドーナツを頬張った。
「お茶、まだ飲む?」と中身が少なくなった勇哉のコップに継ぎ足そうとした時、スマホの着信音が鳴り出した。
「わぁ。懐かしい」
表示されている着信相手の名前を確認し、思わず私は呟いた。
「それじゃあ行ってくるけど……本当に大丈夫?」
玄関先で振り返り、見送ってくれている面子に言葉をかける。
「こっちは気にしないで、たまにはゆっくり楽しんできなさい」
「う、うん」
目の前には母と圭人、そして圭人に抱っこされてご機嫌の勇哉がいる。
生まれてからこのかたずっと一緒だった勇哉と離れ難く、と同時に仲間外れにされたような寂しさも感じながら、私は「うん」と呟いた。
先日かかってきた電話は、前に私が働いていた会社の同期で、仲良くしていた田中さんだった。
付き合っている彼が家業を継ぐために東京を離れ、遠距離恋愛になっていたらしいのだが、結婚することに決めたらしく、つい先日会社を辞めたようだった。
引っ越しの準備を進めながら私のことを思い出してくれたようで、ランチでもと誘ってくれたのだ。