見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
奇しくも待ち合わせに指定された場所は、和哉さんとの様々な思い出が詰まった公園の近くにあるあの駅だった。
「波多野さん、久しぶり!」
駅前をきょろきょろしていると、知っている声に呼びかけられた。顔を向けると同時に笑顔になる。
「田中さん! 本当久しぶりだね」
楽しみにしていた再会に嬉しさいっぱいに返事をし、私は田中さんに向かって走り出した。
以前テレビで見て気になっていたイタリアンのお店でペスカトーレを注文し、エビにイカ、アサリなどふんだんに使われた魚介の旨味を堪能する。
食べる手だけでなく、話も止まらない。田中さんから飛び出す部長の愚痴に、私も「あぁ、わかるわかる」とあの頃を思い出しながら話を膨らませる。
昇進だったり、寿退社だったり、あの二人は実は秘密で付き合っていたなんていう話など、私が辞めてから起こった出来事もどれも面白く、それから勇哉の話もたくさん聞いてもらって、私は彼女とのお喋りに夢中になった。
お店には二時間近くいただろうか。「準備があと少し残っているの」と実は明日引っ越しの予定だった彼女と共に、席を立った。