見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました


「波多野さん、元気でね。どうしてるかなって気になってたから、会えてよかった。わざわざ来てくれてありがとう」

「私も連絡もらって嬉しかったよ。田中さんも元気でね。それと、結婚おめでとう。お幸せに」


名残惜しさで胸をいっぱいにさせて店の前で別れた後、私は元バイト先のカフェでコーヒーでも飲んでから帰ろうかなと歩き出した。

社員さんも含め、カフェに知っている顔はなかったけれど、働いていた頃の思い出に浸るには十分で、圭人が送ってくれた動物園での勇哉の写真を、ホットコーヒーを飲みながらのんびり眺めた。

そうこうしているうちにいつの間にか雨が降り出し、折り畳み傘を持ってきてないのにとため息をつく。

止んでくれないかなと願ったが、窓の向こうの歩道を打つ雨は弱まるどころか強くなっていった。

幸いにも、カフェの隣にはコンビニがある。

雨は止みそうにないため仕方ないと諦めて、店を出たその足で、傘を買うべくコンビニに駆け込んだ。

購入したビニール傘をさして、駅に向かって歩き出す。

そっと視線をあげて嫌でも視界に入ってくるのは、変わらずそこにあるヤギサワホールディングスの本社ビル。

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