君じゃなきゃ。


左横、合間に一人挟んでニコニコ笑う健人の姿が見えた。


ちょっと……人がいるのに手なんか触ってきたらバレちゃうんじゃ……!


あたしはパシッと軽く健人の手を払った。


健人は頬をプクッと膨らませて怒ってますアピールをしてくる。


そんな顔されても……!あたしだって怒りたいのに!



ようやく10階に到着したエレベーターにホッと胸を撫で下ろしながら降りると、健人も同僚とお昼らしく同じところで降りてきた。


「さくらのイジわる~」

と、耳元で軽く囁いて同僚とメニューを見に行ってしまった。



「そっちこそイジわるじゃん!」



あたしはいつも健人に振り回されがちだ。

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