羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
私が固まっていると、先輩は私の髪をなで、私の額に自分の額を合わせた。
そのしぐさに安心している自分がいる。
「……みゆ? ほんとにいいの?」
そのまま口づけられる。
それがまた軽いキスで、まだもっと、と思ったところで先輩の唇は離れた。
「先輩っ……もっと……」
そうつぶやいてしまって、激しく動揺する。「い、今のは……!」
なのに先輩は楽しそうに笑うと、また私に口づけ、そして唇を離すと、まっすぐな目で私の目を捉えた。
「絶対に優しくする。だからね、みゆのハジメテの相手が俺だってこと、ちゃんと見てて。覚えてない、なんて言わせないから」
どういう意味、と問おうとしたところで先輩の唇が首筋に埋まる。
太ももを撫でる手に、あの時のことを思い出して一瞬身体を固くしたけど、あの時のような嫌悪感もなく、ただ、触れられる部分が全部熱を持ったみたいに、もっと触ってほしい、と不埒なことが頭をよぎった。
「私……」
「みゆ、どうしても無理なら言って」
先輩が自分のネクタイを少し乱暴に引き抜く。そしてまっすぐ私を見つめると、
「逃げるなら、今だよ」
と低い、切羽詰まった声で言った。
私はどうしていいのかわからずに一瞬固まったのに、私の手だけは勝手に動いて、先輩の背中のシャツを掴んでいた。