羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】


 戻ろうとしたところで、後ろから
「柊さん」
と声がかかって振り向くと、新田先生だった。「柊さんのことは、所長から聞いています」

 そう言われて一瞬で顔が青くなった。
 所長とは羽柴先輩のことだ。あの先輩は何を言ったんだ!

「まさか……!」

 あのことまで言ったんじゃないだろうな!
 でも、あの事って何だろう。後ろ暗い出来事が最近多すぎて、どれだかはっきり判断できなくなってる。やだ、もう泣きそう。

 そんな私を見て、新田先生は笑うと、
「柊さんのこと、猛アプローチしても、全然振り向いてくれない後輩って言ってましたよ」
と言う。

「……」

 ちょっと安心したけど、それはそれでどうなんだろう……。
 新田先生は続ける。

「所長、僕が知る限り誰とも今まで付き合ってなくて、女の子には興味ないんじゃないかって噂まであったんですよ」
「そ、そうなんですね……」

 それはあれがアレできないことに関係しているような気がするが、そうとも言えない。

「それが『好きな人がいる、高校からずっと』だもん。顔に似合わないですよね。柊さんが不安になるのも確かですよ」

 そう言われて、私は決して不安になっているわけではないと思った。
 でも目の前の新田先生は、私がOKを出さないのは、羽柴先輩の言葉に対する不安があると思っているようだ。

 ちがいます、と否定しようとしたところで、


「でも大丈夫ですから。所長、本気であなたのこと、好きですよ」
 そんなことを言うと、新田先生は会議室に戻って行った。


 私はあることに気づいて固まる。

 だって私、今……そのこと、分かってる、って思った。
 私は、羽柴先輩の言葉も、気持ちも、もう信じてるんだ……。

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