羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】

 先輩の家は玄関までしか入ったことはなかったけど、室内も想像以上に広かった。
 ソファの前のローテーブルに日本酒とグラスを出してくれて、私はそれを注ぐ。

 ふたりで乾杯をして一口飲むと、
「おいしい!」
私は叫んだ。

 あぁ、やっぱりそれだけの品質なんだよね。おいしい。

「ウン。確かに飲みやすいね。俺は日本酒あまり飲まないけど、これなら飲めるな」

 先輩も笑って、少し目が合う。それだけで私の心臓は限界までドキドキと鳴った。

 どうしよう、キスとか、されるだろうか。
 覚悟して黙り込むと、先輩はその場を立ち上がりキッチンの方へ行く。

 私は拍子抜けして先輩を見上げた。


「なにかつまみでも作るね」
「作れるんですか?」
「食べたら、これから俺のことを羽柴シェフと呼ぶことになるよ」
「なにそれ」

 私がくすくすと笑うと、先輩も楽しそうに笑う。
 なんだかこの空間がとても心地よかった。

< 99 / 302 >

この作品をシェア

pagetop