幼かった恋心
でもその距離がちょうどいい……、私はそう思っていた。


しかしそれは、


「私さ……光志くんの事好きになっちゃったかも。」


美紅の一言で、傾いていった。


胸の奥でチクンという痛みが走り、クラスでもモテていた美紅に告白されたら2人は付き合うのでは無いかという不安感は、その日1日私に付きまとった。


「……そうなんだ。応援する。」


そんな私から出てきたのは、本心100パーセントでは無い言葉。


2人を付き合わせるために、光志くんは好きな人いるの?、美紅って凄い良い子でね!など、移動教室で席が近くなったのを良いことに美紅の良いところ自慢や質問を繰り返していた。


美紅のためというのが6割。微かに理解していた自分の気持ちのために4割の下心に、美紅だから気づいていなかったのかもしれない。


でも優しかった美紅はそれを分かっていながらも、私に言わないで置いてくれていたのか……今はもう、美紅の中で記憶にもないのだろう。


しかし、そんな名前もついていなかった私の感情に名前がついたのは、


「光志くんって隣のクラスにいる希(のぞみ)の事好きなんだって……。」


の、一言からだった。


希は文武両道の美人で、美紅と張り合うか、それ以上にモテていた女の子。
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