幼かった恋心
私に勝ち目なんてないじゃん……そう頭に過ぎったと同時に、胸の奥がツキン程ではない痛みと不快感でいっぱいになってしまった。


「……好きなんだ。」


自分でも無意識に零れてしまった言葉に、ずっと名前が付かなかった気持ちに名付けられ、私は失恋と共に恋心を産んでしまった。


近くにいても遠くにいても、光志くんは私の視界にいる。昔は嫌だった光志くんと私の冷やかしにも、嫌じゃない自分がいる。話していたらずっと話していたくなる。美紅や希と付き合ってほしくないと思う嫌な私がいる。


今までの疑問は全て……大好きだった恋愛漫画の主人公に当てはまり、違うとするなら、この想いは決して叶わないということ。


その後ーーー美紅が光志くんへの想いを諦め、私と光志くんは知り合い以上友達未満のまま卒業式を迎える事となった。


高校が違くなった私と光志くん。


中学3年生でクラスは別になり、話す事が無くなったから、きっと高校に入ったら話す事は無くなる。


だからなのか、自分なりに勇気を振り絞り、アルバムへの寄せ書きもしてもらった。


それは私と光志くんも『高校に行っても元気でね。』と、当たり障りの無い事柄。


なのに喜んでいる自分に、自分でも呆れてしまう。


そして、本当に最後となってしまった日。


「春奈さん!」


私は意外にも、教室で光志くんに名前を呼ばれたのだ。


光志くんの後ろの方でニヤニヤと笑っている、光志くんの友達達。
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