まだ、青く。
「俺が夏目を報道部に誘った張本人なのに、夏目のことちゃんと支えるって、弟さんに言えなかった。

あの時、俺...自信が無かったんだ。俺の一存で夏目の人生を変えてしまったかもしれないって思うと...なんていうか、その...怖くて。

俺のエゴっていうか、偽善者っていうか、そうなのかなって。夏目の気持ちも確かめないで突っ走って押し付けだった」

「...違います」


私は潮風に乗せて力強く言葉を放った。

凪くんの胸の奥深くに刺さって抜けないように。

私の言葉と思いが届くように。

私は凪くんに真っ直ぐ視線をぶつけた。


「私は凪くんに居場所を作ってもらえて本当に嬉しいんです。報道部が大好きなんです。

ずっと...ずっとずっとここにいたいんです。そんな風に思ったのは生まれて初めてなんです。

だから、どう言葉にしたら良いか分からないんですけど...その......手伝ってほしいんです」


手から汗が滲み出てきて私は咄嗟にハンカチを握りしめた。

手汗がひどいのは昔からだけど、今日はいつも以上にひどい気がする。

でも、伝えなくちゃ。

言葉にしなきゃ、何も伝わらないんだから。

私は両手を握り、目を瞑った。

どうか、

この思い、

届きますように。


「私の気持ちを一緒に見つけてほしいんです、凪くんに...。だから、これからも私と同じ場所と同じ時間を共有して下さい。そして、探して見つけて下さい。どうか...お願いします。私には報道部と凪くんが必要なんです」

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