まだ、青く。
母は棚から何個かタッパーを取り出し、大皿から取り分けて蓋をした。

そして、あっという間に保冷バッグにそれらを詰め込み、私の目の前に突き出した。


「これ、四十万さん家に持ってって」

「えっ?」


母と渉がにやりと笑いながらこちらをじっと見つめる。


「最近また汀次さんの腰がダメになっちゃったらしいのよね~。
凪くんもお勉強忙しいのにバイトと看病で大変みたいだから、ちょっと優しさをお裾分けってことで、どう?行ってくれる?」


そりゃ、会いたいのは山々だけど、まだなんとなく心の準備が出来ていなかったから、突然こんなことになって戸惑っている。

それにまだ帰宅したばかりだよ。

急かしすぎだよ...。

なんて思っても口に出来ない。

母も渉も私が拒んだとしても、なんとしても私にこれを握らせるだろう。

魂胆は見え見えだ。

ならば、私も腹を決めるしかない。


「...分かった。ちょっと行ってきます」


私の言葉に渉はさらに口元を緩め、母はクスクスと笑った。


「今日は少しくらい遅くなってもいいから。お父さんにも伝えとく」


したり顔の2人に見送られ、私は家を出た。

まだスーツケースの中身を整理していないうちに、私は重要なお使いを頼まれてしまったのだった。

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