まだ、青く。
坂道を下ると、港が見えてくる。

時刻は午後6時過ぎ。

夏だから日が落ちるのは遅くなり、まだうっすらと水平線に茜色が見える。

茜色と群青色。

混じり合うはずのない対照的な色が、海という大きなキャンバスの上では見事に調和している。

鮮やかなその色彩に目を奪われていると、潮風が頬を撫でた。

都会とは違う風の音と香りに、胸がシュンとなった。

ここを離れて新しい世界に飛び込んで、

自分はもう新しい世界の住人になったと思い込んでいた。

でもまだ片足はここに着いている。

ううん、

これからだってこの世界でも片足を付けたままだ。

私はここでも呼吸をしていたい。

どの世界でも、私は私だから。

その世界に心がある限り、私はそこにいるのだから。

今、私の瞳に映る世界は、

紛れもなく私が生きてきた世界で、

私の"故郷"なんだ。

故郷は心のオアシスになる。

水を飲みに、

安らぐために、

過去を懐かしむために、

過去から学ぶために、

故郷に帰ってきてもいいかな?

...きっと、いいよね?

私の生きてきた道も、

これから歩んでいく道も、

どっちも私にとっては大事な道だから。

私はどちらも捨てずに、

この腕で抱いて、

この胸に留めて、

生きていく。

そう、決心した。


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