まだ、青く。
汀次さんの腰が早く良くなりますように、と白浪神社にお願いをしてから、私はまた坂道を上った。

でも、今度は隣に凪くんがいる。

その存在が大きくていとおしくて

徐々に距離は縮まっていく。

坂の中腹くらいでどちらからともなく指に触れ、指と指の間に指を入れ、固く手を繋いだ。

学校からの帰り道では私達の間には自転車があったし、それが無くともお互いに恥ずかしくて俯きがちに歩いていた。

近付くはずの1年がなんということもなく過ぎて、

当たり前に側にいたはずの存在が

自分の選択によって遠ざかった。

離れてみて分かったことがある。

離れてみて伝えたくなったことがある。

それを口に出来るのは

今、だけなんだ。


私は立ち止まった。

凪くんも私に合わせて足を止める。

上ってきた道を振り返れば、そこには夜空をそのまま映し出したかのような瑠璃色の海が広がっている。

水面が灯台からの光に照らされてキラキラと反射している。

まるで、ラピスラズリのよう。

いや、それ以上に美しく、自然の輝きに目も心も奪われる。

月の灯りは船の行くべき道を示している。

私はその光景を見て思い出した。

あの日の約束を...。

私は凪くんの方に顔を向け、ゆっくりと口を開いた。

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