狙われてますっ!
今日は早く帰って寝よう。
明日に備えて。
そんなことを思いながら、木曜日、汐音はコンパに参加していた。
予定より人が多く、小洒落た居酒屋のかなり広めの個室だったのだが、壁際の長いソファはぎゅうぎゅう詰めだった。
そのソファのど真ん中が渡真利で、渡真利の右が真琴。
左が汐音だった。
席はさりげなく真琴が決めたのだが。
「私、渡真利さんの右に座るわ。
左の横顔が一番綺麗に見える気がするから。
左は汐音ね。
あんたは別に渡真利さん狙ってなさそうだから。
前は男性陣でいいわ」
と言っていた。
「そうですか。
そういえば、人間の顔って右側が理性で、左側が感情だそうですよ。
左側の顔には、素直な本音が出るそうです」
真琴さんの魅力的な笑顔で見えていいでしょうね、という意味で汐音は言ったのだが、真琴は、
「……左側に座ろうかしら」
と言い出す。