狙われてますっ!



 今日は早く帰って寝よう。
 明日に備えて。

 そんなことを思いながら、木曜日、汐音はコンパに参加していた。

 予定より人が多く、小洒落た居酒屋のかなり広めの個室だったのだが、壁際の長いソファはぎゅうぎゅう詰めだった。

 そのソファのど真ん中が渡真利(とまり)で、渡真利の右が真琴。

 左が汐音だった。

 席はさりげなく真琴が決めたのだが。

「私、渡真利さんの右に座るわ。
 左の横顔が一番綺麗に見える気がするから。

 左は汐音ね。
 あんたは別に渡真利さん狙ってなさそうだから。

 前は男性陣でいいわ」
と言っていた。

「そうですか。
 そういえば、人間の顔って右側が理性で、左側が感情だそうですよ。

 左側の顔には、素直な本音が出るそうです」

 真琴さんの魅力的な笑顔で見えていいでしょうね、という意味で汐音は言ったのだが、真琴は、

「……左側に座ろうかしら」
と言い出す。
< 147 / 438 >

この作品をシェア

pagetop