狙われてますっ!
「その方がお前の側で、いろいろと動きやすいし。
 お前の周りに目を光らせとくこともできるしな。

 お前も妙な男に言い寄られたりしなくていいだろう。

 俺たちがこんな仕事を押し付けたばっかりに、とかなったら申し訳が立たないからな。

 お前の親や加倉井求に」

 いや、私には……? と思う汐音の頭の中に、松明(たいまつ)を手にして、自分を取り囲む真琴や輝美の姿が浮かんでいた。

 獲物を仕留めようとするメスライオンの群れのように、陣形を造り、汐音に忍び寄ろうとしている。

 渡真利さんが私を好きなフリをするだなんて。

 父母さんを殺るどころの騒ぎではない。

 私が殺られるっ!

「……き、危険手当をくださいっ」
と思わず言って、

「今か」
と渡真利に言われる。

 産業スパイや死の武器商人より危険な人たちに狙われそうだからですよっ、
と汐音は思っていた。







 
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